障害者向けの「グループホーム」への投資が増えている。これまで人気のあった「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」の需要が頭打ちとなるなかで、新たな投資対象として注目を集めているという。
障害者施設を巡っては、国の方針が数年前に大きく変わったことが需要に影響している。第4期障害福祉計画(2015〜17年度)により、山奥や街から離れたところに障害者を隔離するような入所施設は作れないルールに変更された。これまでの入所生活から地域生活へと移行し、支援を受けながら一般の家庭と変わらない自立した生活が送れるようにするという新たな方針のもと、施設入所者数についても削減に関する数値目標が設定された。
その結果、入所施設でなければ対応できない重度障碍者を除き、比較的支援の必要性が低い人は入所施設を出ざるを得ず、行き場を失った障害者の受け皿としてグループホームが必要とされているわけだ。
運営面からみても、障害者グループホームは長所が目立つ。例えば障害のある人は障害のない人と同じようには働けないこともあり、家賃の払いに不安があるかもしれないが、障害者には「障害基礎年金」という年金制度があり、さらにグループホームの入居者には国から一律1万円の家賃助成があるほか、行政単位でも障害者福祉に助成が行われるなど、入居者が負担すべき家賃が実質ゼロになるケースも珍しくない。
実際に、障害者グループホームに入居する人の約8割は実質的な家賃負担なしに入居できるそうだ。また実際の運営は専門の業者が行うため、オーナーは家賃を受け取るだけという一括借上げの形態をとっている。もちろん事業者が倒産する可能性はゼロではないが、入居率は前述のとおり安定しているので、リスクはそこまで高くないと言えるだろう。
さらに最近はアパート・マンション投資に対する融資が通りにくくなっているが、障害者グループホームは国が推進している取り組みでもあり、社会貢献の意味合いも強いので、融資が通りやすい面もある。こうした様々な理由で、障害者グループホームは人気を集めているといえる。
もっとも需要過多だからといって、どんな物件でもいいというわけではない。家賃が相場より高ければ入居者は付かないし、移動に不自由な入居者もいることから、近隣にコンビニなど便利な施設があるかどうかは通常のアパート以上に重視されるという。
さらに気を付けたいのは、運営事業者の選択だ。障害者福祉は社会貢献に対する熱意が先走ってしまいがちなので、投資する側としては冷静に、しっかりとした経営感覚がある事業者に借り上げてもらうことが重要となる。(2020/09/14)