決算時の棚卸資産で常に頭を悩ませる処理の代表格といえば、不良在庫の扱いだろう。税務上のルールでは、「著しく陳腐化」した棚卸資産は、評価損として計上することが認められているのだが、その判断は難しい。
国税庁の通達によると、いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売できないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること、またその商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、その商品が今後通常の方法により販売できないようになったこと――となっている。
現場の感覚で「もう売れない」と分かっていても、何らかの形で販売できる余地があれば、棚卸資産に含めて決算を組む必要がある。売れる可能性が「絶対的に0%」となった状況でなければ、評価損の計上は認められない。
実務では、不良在庫を除外した上で、棚卸資産を計算しているケースも見られるが、陳腐化したことによる評価損の計上が必要なので注意したい。過去には、古くなった月刊誌を「不良在庫」として決算を組んだ古書店の経理処理について、「棚卸資産として認められるのは、災害により著しく損傷したことか、もしくは著しく陳腐化したによって、その価値が帳簿価額を下回ることとなった場合だけ」などとしたうえで、「帳簿価額の減額を行っていない」として、評価損を認めなかった裁決もあった。不良在庫を期末の棚卸資産から除外すれば、評価損を計上しなくても結果として利益数値は同じだが、あくまでも「評価損」なのだから、経理が必要となる。面倒だが仕方がない。(2020/04/06)