遺族が死亡退職金の受け取りを辞退

でも、相続税の課税対象


 退職金は勤務していた本人が受け取るべきものだが、在職中に死亡すると遺族が代わりに「死亡退職金」として受け取ることになる。この死亡退職金は相続税の課税対象財産となる。

 

 夫の死亡退職金の支払いを受けた妻が、「夫は会社にお世話になったから、退職金を経営に役立ててもらおう」と考え、全額を返還したとする。サラリーマンではなかなかないことではあるが、中小同族会社のオーナー経営者ならばこうしたケースも珍しくないようだ。

 

 だが死亡退職金の辞退は慎重に決断しなければならない。もし妻が、受け取りを辞退したのだから相続税の課税対象から外せる、と考えていたのであれば思わぬ税負担を負うことになる。たとえ相続税申告の前に返したとしても、死亡退職金を受け取る権利が発生した時点で、夫の相続財産に含めなければならない決まりとなっているためだ。

 

 なお相続税の課税対象となる死亡退職金は、被相続人の死亡後3年以内に確定したものに限られる。その期間内に金額が確定していれば、実際の支払いがそれ以降となっても課税対象となる。ただし、3年以上経過してから確定した金額には税金がかけられないということではない。期限が過ぎてから相続人が受け取る死亡退職金は、相続税の課税対象ではなくなるが、相続人の一時所得として所得税が課税されることになる。(2018/11/21)