貸倒損失にするには努力が必要

回収不能の証拠を残す


 会社を経営していれば、売掛金や貸付金といった金銭債権が回収できないこともある。相手の弁済能力の喪失によって回収不能となった損失を「貸倒損失」として損金処理することになるのだが、常にこの処理が認められているわけではない。

 

 まずは債務が履行できなくなった相手の資産状況や支払能力などを客観的に示し、その全額が回収できないことが明確となってはじめて、「貸し倒れ」として損金にすることが可能になる。

 

 回収不能かどうかは、「債務者の資産状況などの事情」に加え、「債権回収に必要な労力と、債権額と取立費用とのバランス」や「債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等」といった債権者の事情、経済的環境等も踏まえて、判断することとなる。

 

 加えて、その金銭債権について担保物や保証人があるときは、単純にその債権が回収不能となっただけでは貸倒損失の損金算入は認められない。その債権に付随している担保物の処分や保証人への請求をした上で、回収可能性の有無を判断することとなる。

 

 いずれにしても、回収にあたって債権者としてどれだけ努力したかがポイントとなる。最近は税務調査でも貸倒損失が狙われる傾向にあるため、「一度電話したけどダメでした」という程度では厳しい追及を受けかねない。回収にあたっては、電話の記録や内容証明郵便、戻ってきた督促状、電話した日時や担当者など、社内の記録としてしっかり保管しておくのが賢明だ。(2018/09/13)