脱税の厳罰化で懲役7年半も

執行猶予なしの実刑判決


 一昨年、輸出免税の還付制度を使って約17億円を脱税した経営者に、執行猶予なしの懲役7年6カ月、罰金6千万円の実刑判決が言い渡された。脱税で執行猶予なしの実刑判決が下されるのは非常にまれだ。

 

 この経営者は、7年間にわたって国外から宝飾品を架空に仕入れたとし、消費税11億円の支払いを免れたうえ、輸出免税制度を利用して約6億8千万円の不正還付を受けていた。

 

 架空の海外取引を計上して消費税の還付を受ける手口は、国税庁が毎年まとめる法人税脱税事案でも常に取り上げられ、いわば消費税脱税の典型例とも言えるスキームだ。

 

 とはいえ、下された懲役7年6カ月の実刑は、過去を見ても例がないほどの重い判決だ。2011年に27億9千万円を脱税した会社員の男性が「相続税で過去最高となる脱税額」を理由に執行猶予なしの実刑判決を受けたが、それでも懲役期間は2年6カ月だった。

 

 16年には家族の遺産を社会福祉法人に寄付したように見せかけて相続税約5億円を脱税した事件で実刑判決が下されたが、こちらも2年6カ月。これらの事件と比べてみても、懲役7年6カ月の重さが際立つ。

 

 判決文では、「脱税額はこれまで例がないほどに巨額」「犯行には計画性と常習性があり悪質で、相当長期間の懲役は免れない」と悪質さを糾弾した。脱税額の大きさに加え、7年間という犯行期間の長さ、常習性、さらには知人の不正還付にも関与していたことなどが総合的に考慮され、過去に例のない長期間の懲役となったようだ。悪質な脱税の代償は、かくも大きい。(2020/09/07)