相続税計算、忘れがちな地方税

住民税・固定資産税も債務控除


 相続税を計算するにあたっては、預貯金や不動産などの相続財産の評価ばかりに意識が集中してしまい、債務の控除についてはついおざなりになりがちだ。

 

 葬儀費用などは、その時の慌ただしさに流されて、いざ相続税の計算をしようとしたときに「領収書が見当たりません…」といったケースも多く見られる。相続税額は、預貯金や不動産などの相続財産の課税評価額から、被相続人の残した債務と被相続人の葬式にかかった費用を控除して計算する。

 

 債務控除のための証拠資料は銀行の残高証明書がベストだが、実務としては単なるメモ書きであっても認められる。ただ、債務があることは確実でも、その金額が曖昧であるときは、現況で「確実」と認められる範囲の金額だけが控除される。

 

 債務の代表格は住宅取得に伴う借入金や未払金だが、ここで忘れがちなのが地方税、つまり住民税と固定資産税だ。これらは毎年1月1日を基準に賦課された後に決定通知書と納付書が届くので〝控除忘れ〞のないようにしたい。

 

 このほか、親子の間での貸し借りも盲点だ。子どもが父親に金を貸していて、返済してもらわずに父親が他界してしまった場合、第三者との貸し借りのように契約書等があれば、債務控除の対象とすることができる。つまり契約書もなくなあなあになっている親子の貸し借りは単なる贈与と判断され、債務控除として認められることはない。

 

 なお、契約書のあるしっかりとした「貸し借り」を相続した際には、債権債務関係は民法上の「混同」により消滅することになる。(2018/09/27)