相続前後の預金引き出し

もめごとのタネにならないよう慎重に


 銀行の預金口座は、本人の死後は原則として身内であっても引き出すことはできなくなる。ただそれはルール上の話であり、実際は亡くなったことが銀行に伝わっていなければカードや通帳を使って引き出しや振り込みなどを行うことは可能だ。そうしたことから、「死んだら凍結される前にすぐ銀行で引き出さないといけない」といった情報を耳にすることがあるが、これは場合によっては刑事事件にもなる可能性がある行為なので絶対に避けたい。

 

 課税の面からみれば、死亡した被相続人の預貯金は相続税の対象となる財産だが、仮に死亡の直前に多額の預金が口座から引き出され、それが被相続人の生活費や医療費など、妥当な目的で使われていれば、その分は相続財産には含まれない。また、一部の相続人が被相続人の死後に葬儀費用を負担した場合にも、その分は相続税上のマイナス資産として計算することができる。

 

 相続前後の預金引き出しは、相続人の間でのもめごとのタネになりかねない。たとえすべてを承継する予定の息子であっても、相続人全員の了承を得てからお金を動かすようにしたい。なお、被相続人の死後凍結した口座は「払い出し」の手続きによって引き出しが可能だ。ただ、提出書類が多く面倒なため、入院費用などで必要な金額は生前に引き出しておくのが賢明だろう。(2019/03/11)