相続人がいない、全員が相続放棄

相続財産管理人を選任


 財産を受け取るべき人がいない場合や、相続人がいても全員が相続放棄したとき、故人の財産は「相続人不存在」として法人化され、独立した人格を持つ。これによって第三者が勝手に処分することはできなくなる。

 

 そうなると、仮に故人に金を貸していた場合でも勝手に財産から抜き取ることができないため、債権者は利害関係人として家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てなくてはならない。

 

 相続財産管理人とは、その名の通り相続財産の管理や保存に関する権限を持つ者で、一般的に弁護士などの専門家が家裁で選ばれることが多い。

 

 相続財産管理人は、被相続人に対する債権者や受遺者に対して、2カ月以上の期間を定めて請求の申出をすべきことを公告する。債権者や受遺者は、相続財産管理人に請求の申出をすれば、相続財産法人の財産から弁済を受けることになるという流れだ。

 

 なお、法定相続人がいない被相続人が残した財産は、被相続人と生計をともにしていた人や被相続人の療養看護に努めた人が「特別縁故者」として受け取ることもできる。ただ、被相続人の療養看護をしていた人が裁判所に「特別縁故者」であることを認めてもらうには、療養看護の日記など証拠資料を残しておく必要がある。近所で「ちょっと仲が良かった」という程度では、原則として特別縁故者とは認められない。

 

 さらに、特別縁故者もいないケースや、特別縁故者に財産の一部が分与されてもまだ財産が残った場合、当該財産は国庫に帰属することになる。特定の個人や団体に財産を残したいという希望があれば、遺言や生前贈与などを検討するのがよいだろう。遺言は法律で要件が決められているため、専門家に相談したうえで公証人のもとで公正証書遺言を残すのがベターだ。(2020/09/09)