相続の対象となる遺産は、預貯金、不動産、貴金属、美術品、さらにゴルフ会員権や知的財産権など多岐にわたる。だが、法律の上で相続の対象になるものは、いわゆる「価値のあるもの」だけではない。カードの未決済分や買掛金、未払いの税金、保証債務など、マイナスの資産もれっきとした相続財産だ。
その一方で、被相続人が所有した物であっても、遺産分割の対象とはならないものがある。墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚、系譜など宗教的・祭祀的な要素を含むものがこれに該当する。これらは民法により祭祀主催者が一人で引き継ぐものと定められている。
また、相続の対象ではないものもある。生活保護の受給権、年金受給権、扶養請求権などが該当する。なお、民法上の財産だけが課税対象となるわけではなく、相続税法では「実質的な相続財産で税金を負担するだけの価値のあるもの」が対象となる。例えば「みなし相続財産」などはよい例だろう。
これは民法上の相続財産ではないが、相続税法上は相続財産としてみなされる財産で、生命保険金や死亡退職金、個人年金など定期金に関する権利などが挙げられる。亡くなった人の負担があったからこそ遺された財産であり、被相続人の死亡により相続人に権利が受け継がれたことから、相続税法上は相続財産とみなし、課税の対象となっている。
ただし、生命保険金と死亡退職金にはそれぞれ非課税枠があるので個別に確認が必要だ。このほか、遺言で免除された債務などもみなし相続財産に該当することがあるので、申告漏れのないように気を付けたい。(2020/06/17)