相続した「鍵付き」の仮想通貨

引き出せなくても課税対象


 ビットコイン投資でまとまった額の資産を形成したAさんが亡くなった。家族は、Aさんが残していた帳簿などをもとに、ビットコインの保有額も相続財産に含めて申告することにした。

 

 しかしここで問題が発生する。仮想通貨を動かすためには当然、インターネットから仮想通貨取引所上に設けられたAさんのアカウントにログインしなければならない。しかし家族の誰も、そのパスワードが分からないのだ。

 

 パスワードが分からなくては口座にアクセスできず、仮想通貨を現金化することも使うこともできない。

 

 3月の国会で、国税庁の藤井健志次長(当時)は「パスワードの分からない仮想通貨は相続財産に含まれるのか」という質問に対して、「一般論である」と前置きした上で、「相続人がパスワードを知らない場合であっても、相続人は仮想通貨を承継することになるため、相続税の課税対象となる」と答弁した。その理由は、パスワードを知っているか知らないかの真偽は本人の頭の中にしかなく、課税当局としては確認しようがないため、除外はできかねるということらしい。

 

 仮想通貨投資で得た利益については、昨年秋に「雑所得に当たる」と国税庁が取り扱いを決めたばかり。細部に関しては官も民も手探りといった状態だ。パスワード付きの仮想通貨の相続などもその一例だろう。

 

 仮想通貨交換業者は、遺族の訴えに応じてパスワードを教えてくれるのか、それが法律上の家族ではなくても同じように対応してもらえるのか。さまざまな制度の整備が必要だが、当面は遺言書にこうしたパスワードまで書いておくべきかもしれない。(2018/08/06)