生命保険の名義変更

国税当局の監視強まる


 生命保険の契約者の名義変更が、国税当局に厳しく監視されるようになっている。これまでは、満期・解約・保険事故などによって100万円以上の生命保険金の支払いが行われた時に税務署長への「支払調書」の届け出が保険会社に義務付けられていたが、今年1月からは、保険契約者の死亡時には必ず調書を提出するよう改められた。

 

 調書には保険金受取人の氏名や住所、支払年月日に加え、支払われた保険金額などが記載される。国税当局はこの調書によって、相続税や贈与税の課税対象となりうる保険金の存在を把握することになる。

 

 税務上、契約者の死亡によって保険が相続人などに引き継がれると、その時点での解約返戻金相当額が相続財産となり申告義務が発生する。また通常の契約者変更でも、前の契約者が負担した払込保険料に相当する受取保険金部分が贈与税の対象となる。

 

 調書の届け出が厳格化されると、これまで経営者の節税策として使われてきた逓増定期保険などの高い解約返戻金を利用した「名義変更プラン」にも影響が及びかねない点には注意しておきたい。

 

 名義変更プランとは、会社を契約者、経営者を被保険者として逓増定期保険の契約を結び、解約返戻金が跳ね上がる直前に、契約者を会社から経営者個人に名義変更して保険契約を譲渡するというもの。法人にとってはそれまで資産計上してきた保険料を損金に算入でき、個人にとっては安価で生命保険契約の権利を取得し、変更後に高い解約返戻金を手にすることができる。

 

 調書の提出の厳格化が、直接的に名義変更プランに影響するわけではないが、将来的に「租税回避行為」とみなされる可能性も否定できない。法人が損失を計上してまで個人に保険契約を譲渡することに「経済合理性」があるという大義名分を説明できなければ、税務署に否認される可能性はゼロではない。(2018/07/13)