現代版の「勘当」制度?

相続人の廃除とは


 ドラ息子にワガママ娘――。時代が時代なら、戸主が「勘当だ!出ていけ」と子どもを家から追い出して親子の縁を切るということが可能だった。時代劇によく見られる「勘当」は制度として認められたもので、奉行所に勘当届を提出してこれが認められると人別帳から外すことが可能だった。

 

 人別帳とは、正確には宗門人別改帳と言い、現在でいうところの戸籍原簿や租税台帳にあたるものだ。このリストから外された者は「無宿」となり、家督や相続の権利をはく奪される。当該無宿者が罪人となっても、元の家族は連座から外されるため、家族と家を守るために問題のある子どもを排除する狙いもあったという。

 

 なお、人別帳では勘当された人の名前の部分に札が貼られた。これが「札付きのワル」の語源となっている。明治に入っても旧民法や旧戸籍法では離籍のうえで復籍を拒む制度が認められ、戸主による「勘当」ができる時代だった。だが、現行法では法的に親子の縁を切る方法はない。

 

 結婚、養子縁組などで戸籍が分かれても、実の親との法律上の関係は変わらない。実質的に「親子の縁を切る」ということはあるが、法的に完全な他人になることはなく、相続時には対象者となり、また扶養義務も存在する。

 

 困窮した親の扶養を子どもが放棄したときには、親は家庭裁判所に申し立てをすることが可能だ。そして親が生活保護を申請したときには福祉事務所から子どもに扶養照会文書が送られてくる。

 

 現状で親子の関係を否定する制度としては、養子縁組や摘出否認などがあるものの、やはり「親子」の関係を完全に断ち切ることはできない。なお、6歳までの子どもを対象とした特別養子縁組では親子関係はなくなるが、これは「勘当」の概念とは全く異なる。

 

 唯一、子どもに罰を与える制度として存在するのは、「相続人の廃除」だろう。相続人となる者が、財産を残す者に対して虐待や重大な侮辱を与えるほか、激しい浪費癖があると家庭裁判所が認めると、当該人は遺産相続の権利を失うことがあるため、現代版の「勘当」ともいえる。(2018/07/04)