法定相続情報証明書

便利だが万能ではない


 2017年にスタートした「法定相続情報証明書」制度によって、諸々の手続きが簡素化された。この制度は、全国の登記所のいずれかに相続人全員分の本籍、住所、生年月日、続柄、法定相続分などの情報をそろえて提出すれば、偽造防止措置が施された法定相続情報の一覧図の写しが発行されるというもので、以降の手続きは法務局の発行する写しを利用すれば済む。

 

 不動産登記の手続き、銀行での口座解約の際の書類、相続税申告の際の添付書類として活用することが可能となっている。証明書には決まった書式などはなく、被相続人と法定相続人全員の関係がひと目で分かるよう相続人自身が一覧図を作成し、それを法務局で確認してもらう形となる。

 

 この際、それぞれの住所は任意記載とされているものの、証明書を様々な手続きで利用していくことを考えると、住所もあったほうが便利だといえる。証明書に記載される被相続人と相続人の関係は「子」でも構わないが、相続税申告の添付書類として使うためには、「子」でなく「長男」「長女」「養子」といった詳しい間柄でないと認められない。

 

 さらに証明書は戸籍謄本に基づいて内容の正しさを保証するものなので、戸籍のない人、つまり日本国籍を持たない外国人などが関係者にいる場合には、証明書を利用することはできない。また相続人のなかに相続放棄をした人がいても、証明書の一覧図では他の人と同様に法定相続人として記載されてしまうため証明書を使えない。いろいろと便利な制度だが、万能ではないということを頭に入れておきたい。(2020/09/30)