遺産分割によって相続財産を受け取った配偶者は、1億6千万円か法定相続分の多い方の額を財産額から差し引くことができる「相続税の配偶者控除」を利用できる。そのため遺産分割時には、この配偶者控除をフルに活用して税負担を抑えようと、配偶者の取得分を最も多くすることが一般的だ。
しかし、配偶者が受け取る財産が多すぎると、将来的に配偶者が死亡して子への相続が発生したときに、子が負担する相続税額もまた増えることになる。目先の税金を安くしようとして配偶者の取り分を増やしても、結果として将来の税金が高くなってしまえば、トータルでの税負担では損をすることになりかねない。
遺産分割は税負担のみで考える問題ではないとはいえ、税額が減ればその分家族のもとに残る金額は増えるのだから、二次相続も踏まえて遺産分割を考える必要がある。例えば夫(父)が死亡して一次相続が発生したとする。遺産がちょうど1億6千万円だった場合、そのすべてを妻(母)が取得すれば相続税の配偶者控除がフルに活用できる。妻の今後の生活を考えても、最も合理的な分割方法と言えるだろう。
しかし、妻がもともと固有財産を持っていて、夫の後を追うようにすぐに死亡して二次相続が発生してしまうと、一次相続で継承した夫の遺産1億6千万円と妻固有の財産の合計評価額で相続税が計算されてしまう。相続税評価額が2億円を超えれば、税率が30%から40%へと跳ね上がり、税負担が増大することもあり得るのだ。
最初から二次相続を見据えて、一次相続での妻の取り分を抑えておけば、トータルの税負担を大きく減らすことができる。同様に、小規模宅地の特例を活用する際にも、一次相続での税負担が増えることを受け入れ、妻ではなく長男が特例を適用することで結果的に二次相続までのトータルの税負担額を減らせるケースもある。(2018/03/09)