教育と結婚 2つの贈与特例の違い

相続税対策になるのはどっち?


 教育資金の非課税贈与特例と、結婚育児資金の非課税贈与特例は、まとまった額を一度に子や孫に税負担なしに渡すことができるという共通点がある。贈与を受けた側が長期間にわたって資金を使い、ある一定の年齢までに使い残しが出れば贈与税を課されるという点も同じだ。

 

 しかし教育資金の特例が開始から半年で4万件超も利用されたのに対し、結婚育児資金の特例は開始1年で3千件余りと、両者の〝人気〞には大きな違いが出た。類似した制度であるにもかかわらず、なぜここまで差が開いたのだろうか。

 

 最も大きな理由は、「相続対策」としての使い勝手の違いだ。両制度はそれぞれ、教育資金なら受け取った側が30歳、結婚育児資金なら50歳になった時点で使い残しがあれば、残額に贈与税が課される。ここだけを見ると、期間が長い分、結婚育児資金のほうが有利に思えるかもしれない。

 

 しかし教育資金特例では、贈与後に贈与した側が死亡したとしても、その時点での残額が相続財産に加算されることはない。また通常の贈与では死亡前3年以内の贈与はなかったものとして相続財産に含まれるが、特例を利用すれば3年以内に相続が発生しても課税対象からは除外されることとなっている。受贈者1人につき1500万円まで贈与できるため、孫が3人いるとすれば、余命わずかな時点で〝かけこみ贈与〞をしても4500万円の相続財産を一気に減らすことができるわけだ。

 

 一方、結婚育児資金の特例は、受贈者が50歳になるまでに贈与者が死亡すると、その時点での残額が相続財産に加算され、相続税の対象となってしまう。贈与した時点では贈与税がかからなくても、のちのち贈与者が死亡すると使い残した全額が相続財産に加算される。それまでに使い切ろうにも、資金の用途が結婚・出産・育児という人生の各段階でのライフイベントに限定されている以上、タイミングによっては使いにくいというのも大きいだろう。

 

 導入の目的も制度の概要も似通った2つの贈与税の非課税制度だが、「相続税対策」という観点から見直したとき、その実効性には大きな違いがある。この差が両者の利用件数の差になって、そのまま表れているわけだ。(2018/11/30)