役員を退任し分掌変更

報酬半減しないと退職金に税優遇ナシ


 退職金は長年の功労に報いるものであるとともに、退職後の生活を保障するために支給する意味合いがある。そのため、重い税負担はふさわしくないとして、他の所得と比べて税金が優遇される。

 

 しかし役員を退任し、その後も役職名を変更(分掌変更)してほぼ同じ仕事を続ける場合の退職金は、税優遇される「退職所得」とはみなされない。

 

 税優遇の対象にならないのは、税務署に「形式上の退職に過ぎない」と判断されるケースだ。言い換えれば、実際に退職したと判断できる状況であれば税優遇の対象になる。

 

 例えば常勤役員が経営上の主要な地位から退き、非常勤役員の立場で仕事をするなら問題ない。また取締役が経営上で主要な位置を占めない監査役になれば、取締役を退任した際に受け取る退職金は所得税法上の退職所得とみなされる。たとえ役員のままでも、重要な経営判断をする立場ではなく、かつ分掌変更後の給与が元の給与の半分以下なら、やはり税優遇の対象となる。役員退職給与規定や退職後の取締役会の議事録によって、きちんと報酬引き下げや仕事内容の変更について記録しておくようにしたい。

 

 退職金に掛かる税金は、収入金額から勤続年数に応じた一定の額を「退職所得控除」として差し引き、残りの金額の2分の1にしか課されない。退職所得控除は、勤続年数が20年以下の人は「40万円×勤続年数」(下限80万円)、20年超の人は「800万円+70万円×(勤続年数‐20年)」。また退職手当は他の所得と分離して所得税額を計算するので、給与所得が多い人でも高い所得税率の対象になりにくい。(2020/04/15)