ひとり暮らしの高齢者が、元日に浴槽で亡くなっているのを、様子を見に来た家族が発見した。検視の結果、死亡推定時刻は大晦日の午後10時ごろだという。このひとは1000坪以上の自宅や農地を所有する地主で、遺産の大半が不動産だった――。
土地の相続財産としての価値は、国税庁が毎年7月に発表する「相続税路線価」によって算定される。路線価は毎年1月1日時点での一定の範囲内の道路(路線)に面した土地を評価するもの。つまり土地の相続税評価額は、「死亡した年の元日の値段」によって決められるわけだ。
このひとの場合、大晦日、つまり12月31日の午後10時に死亡したと推定された。そうなると評価額は1年前、〝旧年〞の1月1日の路線価をもとにしたものとなる。税務署はその評価に基づき課税したが、猛反発したのが故人を発見した家族たちだ。
というのも、一夜明けた1月1日、つまり〝新年〞の路線価が大きく値下がりする見通しだからだ。故人が旧年中に死亡したという確証もないのに、税負担に大きな差が出てしまうのはたまらないとして、遺族らは不服を申し立てた――。
このケースは地価が下落している時期を想定したものだが、地下が上昇している状況では〝年をまたいだ〞というだけで相続税が数千万円増える可能性もゼロではない。〝もしも〞の事態が起きる前に、何らかの相続税対策を講じておきたい。(2018/10/05)