居抜き物件の残置物

無償だと受贈益が発生


 賃貸物件からの退去時には原状回復するのが基本だが、なかには「原状を回復しない」ことがメリットになるケースもある。飲食店の居抜き物件などがその代表的な例で、退去するテナント側からすれば設備の解体費用や処理費用がかからずに済む。一方、新たに入居するテナント側としても内装や設備を刷新する必要がなく、コストと時間を節約できる。

 

 オフィス物件でも、間仕切りや配線、机、椅子などの設備や備品が残置された状態のまま、次のテナントが入居するケースがある。

 

 こうした居抜き物件を借りて、前の入居者の残置物を引き継ぐ場合、どのような経理処理が必要になるだろうか。

 

 前テナントに購入代金を支払って有償で引き継ぐ場合、その購入代金を資産に計上することになる。また、無償で残置物を引き継いだとしても、資産価値のあるものなら税務上は時価で譲り受けたものとして経理処理しなければならない。

 

 例えば無償で引き継いだ資産の時価が100万円だったとすると、100万円の受贈益を計上することとなる。残置物を時価よりも廉価で引き継いだ場合にも、税務上は時価で取得したとして経理処理しなければならない。例えば時価100万円の資産を30万円で買ったとしても、資産の取得価額は100万円になり、時価と購入価額との差額70万円が受贈益となるわけだ。

 

 複数の資産を引き継いだ場合でも、個々の資産の購入価額が10万円超なら、一括で経費処理することはできない。資産として計上し、法定耐用年数で減価償却をする必要がある。(2020/12/02)