国民年金の「遺族基礎年金」が支払われる「遺族」の範囲は、「子のある配偶者」か「子」であり、18歳までの子がいなければ遺族年金は支払われない。また、仮に夫が自身の老齢年金を受け取ることなく死亡し、さらに妻にも遺族年金が支給されないという状況になると、これまでの保険料は「掛け捨て」になってしまう。これをカバーするためにあるのが寡婦年金と死亡一時金だ。
しかし、これらは選択受給という仕組みであるため、果たしてどちらを受け取るのが得なのか、よく考えなければならない。
寡婦年金とは、夫が受け取れたであろう老齢基礎年金の4分の3の額を、60歳から65歳になるまでの5年間で受け取る年金のこと。夫は10年以上にわたり保険料を納付しており、また妻は夫との婚姻期間が10年以上継続していることが条件になる。仮に加入期間が35年とすると、妻が受け取る年額は50万円前後となる。
死亡一時金は、その名の通り一度だけ支給されるもの。保険料納付済期間の長さによって12万円から32万円が支払われる。加入期間が35年の場合は32万円だ。
これだけみれば寡婦年金のほうが圧倒的に有利だが、状況によっては死亡一時金の金額のほうが大きくなることがあるので覚えておきたい。まず、妻が自身の老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は寡婦年金を受けることができない。例えば62歳から老齢基礎年金を繰上げ受給すると、寡婦年金は1年間しか受給できないことになるため、死亡一時金を受給したほうが有利になる。
また、妻自身が老齢厚生年金を受けられるときは選択受給になるため、自分の納めてきた保険料額とよくよく見比べて決める必要がある。なお、このとき自身の厚生年金を選択しても死亡一時金を受け取ることは可能だ。このため一般的には「厚生年金+死亡一時金」のセットで受給するケースが多い。
なお、死亡一時金と寡婦年金は、第1号被保険者の独自給付なので給与取得者は対象外と思われがちだが、例えば会社員になる前に自営業者であり、保険料納付要件を満たしていれば受給権を得られる。このときは遺族厚生年金の権利も発生するが、一般的には「死亡一時金+遺族厚生年金」を選ぶことが多い。(2021/02/01)