固定資産税は、土地建物という「資産」を所有していることに対する税金だ。それならば、資産としての価値が下がった場合には固定資産税の額も下がるのが当たり前ではないか――。そんな疑問に関するひとつの判決が出た。
訴えたのは栃木県の観光地、那須塩原の温泉旅館経営会社だ。訴えによれば、旅館が立地する旧塩原町では2003年からの10年間で観光客が27%も減少し、それに伴い宿泊施設も25%減ったらしい。儲けを観光客に依存する温泉旅館は、非常に厳しい状況に置かれているにもかかわらず、「資産」としての価値に課せられる固定資産税に反映されないのはおかしいというのが旅館側の言い分だ。
この訴えには、法令上の根拠がないわけではない。総務省が定める固定資産評価基準の第2章第3節6によれば、「所在地域の状況によりその価値が減少すると認められる家屋等」については、需給事情に応じて減点補正率を適用できるとされているのだ。従来は豪雪地帯などに認められる特例だが、著しく客足の遠のいた観光地にも適用されるべきではないかと旅館は訴えた。
一昨年12月の地裁判決では、「観光客の著しい減少は家屋の市場価値を低下させる」として15%の減額を自治体に命じた。しかし昨年11月の高裁判決では一転、「塩原温泉街で03年以降に倒産や経営移譲をした旅館の大半は建物が競売などで譲渡されており、経営を続けている例も複数ある。観光客や宿泊施設が減ったことによって、ただちに建物の価値が減少するとは認められない」として、訴えを退けた。
もし需要の減少を理由とする固定資産税の減額が認められていれば、温泉旅館だけでなく全国の多くの商用地に影響を与えていただけに、高裁判決は事業者にとって残念な結果に終わった。しかし今後、地方人口の減少が進むにつれて、今回の旅館と同様の主張が増えていくのは間違いないだろう。もし旅館側が上告するのであれば、最高裁の判断に注目したい。(2018/01/09)