政府は中小企業の積極的な事業展開を後押しするため、2014年2月に「経営者保証に関するガイドライン」を策定。融資を受ける際の個人保証を不要とする基準を定めた。
法人と経営者の資産関係が明確に区分・分離されていることや、返済能力に問題のない財政基盤があることなどの要件を満たした事業者については、個人保証を外すよう金融機関に促すというものだ。
しかしガイドライン適用から数年を経過しても、いまだに融資の現場で経営者が個人保証を求められることは多い。そこで検討したいのが、ABL(動産・債権担保融資)の活用だ。
ABLとは、企業の「商品の在庫」や「売掛金」を担保として評価する融資方法のこと。例えば人形や仏壇の小売業を営むある中小企業は、法人と経営者の資産区分が明確に分離されておらず、財務情報の適切な開示にも問題があったため、個人保証を外すことが難しいと一度は判断された。
しかし同社の商品は特定の時期に多く売れるため平均月商に比べて在庫が多く、商品がブランド化されていて在庫の固定化の懸念が小さいなど、動産担保としての評価が高かった。そこで商品在庫を担保とすることで、金融機関は経営者の個人保証のない融資を認めたという。
この会社のように、ABLを活用することで個人保証を外せる例は少なくない。コロナ禍によって多くの中小企業が在庫を抱えて苦しんでいる状況では、あらゆる手段を使ってガイドライン活用の道を探っていきたい。(2020/08/19)