土地にかかる相続税の納税資金

売却納税が大半を占める


 日本の相続財産の約半分は不動産によるものとなっている。ここ数年は現預金の割合が高まりつつあるが、それでも現預金30・7%に対して、土地38・0%、家屋5・3%と、依然として不動産が大半を占めている。

 

 相続財産の多くが不動産である場合、納税資金が問題となる。手持ちの現金が少なければ、当該不動産を売却して現金化するか、または金融機関や親戚などから借りて納めるしかない。最大20年の延納という方法もあるが、それでも払いきる見込みがないときには、土地そのものを納める「物納」ということになる。

 

 物納が認められた場合、土地の価格は国が定める相続税評価額を使う。評価額は「小規模宅地の特例」などの減額措置を考慮した価額で、一般的には売却した場合よりも低くなることが多い。ただ、手数料などの諸費用を含めると相続税評価額よりも高額になることもあるので、安値で売り急がないようにしたい。

 

 売却時の不動産の評価は実勢価格だが、物納はその約8割程度とされている。売却には所得税と住民税が発生することも考慮したい。物納には測量費用などがかかるが、売却には業者の仲介手数料などが発生する。売却による納税期限は10カ月以内。物納は10カ月以内に申請し、最大で1年間の延長が認められている。

 

 なお、1998年から2003年までは6千件を超えていた許可件数は05年あたりから急下降し、17年には87件にまで落ち込んでいる。金額ベースでも98年には3426億円あった物納が17年には27億円となっている。物納が認められにくい以上、売却納税を選択するケースがほとんどだといえる。(2019/03/22)