税務署に納める消費税額は、売上分の消費税額から仕入れ分の消費税額を引いた額にするのが原則だが、前々事業年度の課税売上高が5千万円以下の会社は、業種ごとに決められた「みなし仕入れ率」に基づいて納付税額を計算する「簡易課税制度」を使うこともできる。
簡易課税制度は、課税売上高にみなし仕入れ率を掛けた額を仕入れ控除税額にするので、実際の課税仕入れ額を算出しなくても済むうえ、原則方式と比べて税額が低くなることもある。
みなし仕入れ率は、業種を6種に分けて40%から90%まで設定されている。みなし仕入れ率が最も高いのは「卸売業」だ。この業種の定義について国税庁は「ほかの者から購入した商品をその性質、形状を変更しないでほかの事業者に販売する事業」と定めている。
しかし、業者から仕入れた商品にラベルを張り付けるだけなら、形状が多少変わっているといっても、卸売業として90%のみなし仕入れ率を利用できる。また、組み立て式の家具を配送のために組み上げて販売する業者も卸売業だ。さらに、仕入れ商品を箱詰めしてセット販売しても、税務上では「形状」を変更したとは判断されない。
みなし仕入れ率をめぐっては、国税不服審判所で争われたことがあった。事業者から購入した塗料を用い、別の事業者から預かった家具に塗装する塗装業者が、「塗料の性質および形状を変えずに販売する事業なので、『卸売業』のみなし仕入れ率を使えるはず」と主張したが、「塗料自体を販売する事業とは言えない」としてその主張は認められなかった。(2017/01/28)