冤罪事件の補償金

所得税は課税されるの?


 えん罪事件の被害者は、裁判で無罪が認められれば国に対して補償金を請求できる。補償金の額は、「拘束期間の長短、得られるはずだった利益の損失、精神上の苦痛、警察や検察・裁判の故意過失の有無、その他一切の事情を考慮」して決定されている(刑事補償法4条)。

 

 この補償につき税務上は、「心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料その他の損害賠償金」(所法施行令30条1)として扱われ、所得税は非課税となっている。

 

 また、刑事補償を請求できる人が、補償の請求をしないまま死亡した場合、相続人が補償を請求することができる。ただし、その補償金は被相続人の補償請求権に基づいて支払われるものであることから、その請求権自体は相続財産として課税対象となる。

 

 最近では「振り込め詐欺」や「ヤミ金融」の被害者に対する救済制度として、「被害回復給付金支給制度」がある。これは犯罪によって不当に得た利益を刑事裁判で犯人から没収して、事件の被害者に給付金を支給するもの。支給を受けられる人は、犯罪行為の被害者のほか、事件ごとに検察官が具体的な範囲を定める。被害者の相続人も対象となる。

 

 この被害回復給付金も課税所得の対象となるのかどうかが気になるところだが、結論からいえば、原則として課税対象にはならない。国が支給する給付金についてはその給付の目的や性質をかんがみて、税法ではなくその給付金にかかる法律の中で公租公課禁止規定(課税を禁止する規定)を設けているケースが多い。(2017/12/26)