民法上の住所と居所の違い

単身赴任者の住居は住所未満の居所


 所得税法では、納税義務の判断を日本での「住所または居所」の有無で区分している。ここで言う「住所」とは生活の本拠を指し、一方の「居所」は生活の本拠とまでは言えないが、相当期間にわたって継続居住している場所のことをいう。これらは所得税法の定義ではなく、民法の概念を流用したものだ。

 

 住所とは、「東京都中央区京橋1の14の9」のような番地だけではなく、実態としての生活の本拠を指す。生活の本拠について判例では「一定の場所が生活の本拠に当たるか否かは、住居、職業、生活を一にする配偶者その他の親族の存否、資産の所在等の客観的事実に、居住者の言動等により外部から客観的に認識することができる居住者の居住意思を総合して判断する」と、客観的に総合判断する旨を述べている。

 

 一方の「居所」は民法23条で「住所が知れない場合には、居所を住所とみなす」とある。つまり「居所」は「住所」に準ずるものとして使うということだ。住所が「知れない」とは、「分からない」という意味に加え、「無い」ことも含まれる。居所として認定される例には、単身赴任者が暮らすアパートや社員寮、学生の下宿などが挙げられる。状況によってはこれらの場所が「住所」に格上げされることもある。(2020/06/29)