中小企業の決算公告は法的義務

罰則もあるがほぼスルー


 「公告」とは、会社が株主や債権者などの利害に関係する一定の行動をとる際に、利害関係者にその事実を知らせるため、会社法に基づいて行う情報開示の手段のことをいう。実際に行われる公告としては、決算公告、株主名簿の基準日を定めたときの公告、M&Aなどで反対株主の株式買取請求権の機会を確保するための公告、M&Aや減資などで債権者に異議を述べる機会を確保するための公告などが挙げられる。

 

 日常的な業務で機会が多いのは、やはり年度ごとの決算公告ということになるだろう。決算公告は、株式会社である以上は必ず行わなければならない法的義務として定められている。会社法976条では、決算公告を怠った場合には100万円以下の罰金を科すと規定している。

 

 しかし実際には、公告を怠ったことに対する罰則の運用は、ほとんどされていない。その理由の一つには、会社法施行以前からある有限会社は、会社法施行後は株式会社として取り扱われるものの、決算公告の義務が課されていないこともあるようだ。

 

 罰則がほぼ適用されないこともあり、多くの中小企業では、公告をすること自体が登記の必須条件となっている減資のケースなどを除いて実施されていない。公告の方法は、①官報に掲載、②日刊新聞紙上に掲載、③電子公告――の3種類がある。

 

 最もポピュラーなのが官報への公告だが、最近では自社のウェブサイトに掲載する企業も増えているようだ。それぞれの方法にかかるコストを比べてみると、官報への公告にかかる費用は、大企業ではない一般的な株式会社が貸借対照表の要旨を掲載するのに要するスペース(2枠分)で7万円ほどとなる。

 

 自社のウェブサイトに掲載すれば、ほぼ費用はかからない。ただし電子公告の場合、公告の内容が決算以外だと、法律が定める掲載期間に公告が行われていたかどうかを第三者に確かめてもらう費用が別途発生し、結局7〜8万円の出費は必要となる。(2020/06/12)