上場株式での相続税の物納

利用には厳しい要件


 相続税は、数ある税目のなかでも唯一「物納」が可能な税金だ。死亡した人の自宅など、すぐに現金に換えられないものが相続財産に多いことがその理由だろう。この相続税の物納について2017年度税制改正で、ある見直しがされた。

 

 物納できる財産には順位がある。第一順位のなかで納められる財産があればそれから、なければ次の第二順位のなかから納められるものを探す――という手順を踏む。第一順位には不動産や国内証券など、第二順位には非上場株式、第三順位には動産が規定されている。

 

 17年度改正では、従来は第二順位だった「上場株式」が第一順位に引き上げられた。物納をする場合、まず上場株式から納めることが可能となったわけだ。国税庁によれば、上場株式の価値は原則的に「相続が発生した日」の価格で評価される。そして物納財産として利用する際の評価額もそれに準ずる。

 

 いつ発生するかわからないのが相続だが、仮に相続が発生する直前に現金を上場株に換えておくことができたとしたら、相続税の申告までに株が値下がりしていても、前述した評価方式に則って相続発生日の株価で物納できる。逆に値上がりしていれば、株を売却して相続税分のみ納付すれば、差益は相続税の対象とならない。

 

 ただし物納を利用するためには、延納などを使っても現金で納付できない事情がなくてはならないなどの厳しい要件が存在する。理論上は可能でも、実現性に乏しいと言わざるを得ないのが「上場株での相続税の物納」による〝相続税対策〟だ。なお、物納順位第1位の「上場株式等」には、株式のほか社債券や投資証券、証券投資信託の受益証券、新株予約権証券なども含まれるが、短期社債は含まれないので注意したい。(2018/01/10)