イデコプラスってなに?

掛金上乗せで退職金を整備


 現役時代の運用次第で老後に受け取れる金額が変わる確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に、今年5月から新たな制度が加わった。従業員が個人で加入しているイデコに、企業側が掛金を上乗せして支払えるという制度で、スタート時は「逆マッチング拠出」、「中小事業主掛金納付制度」などと呼ばれていたが、8月下旬に「iDeCo+(イデコプラス)」という愛称も決定した。

 

 これまでも、企業が確定拠出年金を退職金制度として導入しているケースで、従業員が個人で掛け金を上乗せする「マッチング拠出」は存在したが、イデコプラスはそれとは逆に、従業員が加入している個人用の年金に企業が後から掛金を上乗せするというもの。

 

 マッチング拠出もイデコプラスも、結果としては個人と会社が折半して掛金を支払う形になるが、イデコプラスでは会社が企業年金制度として導入整備する必要がないという特徴がある。

 

 イデコプラスに加入できるのは、従業員が100人以下で、企業として年金制度や厚生年金基金に加入していない中小企業に限られている。あくまで企業として退職金制度を整備できるほどの余裕がない場合の救済措置ということだ。

 

 確定拠出年金を会社が導入する最大のメリットは、従来の確定給付年金に比べて会社側の負うリスクが非常に少ないことがある。将来の給付額が決まっている確定給付年金では、積立金の運用に失敗するなどで給付額を確保できなくなれば、会社がその差額を補てんする義務が求められる。その点、確定拠出年金なら会社は月ごとの決まった掛金を拠出してしまえば、後の投資運用は個人の責任だ。

 

 運用結果に責任を持たずに済み、長期的な補てんリスクに備えなくてよいのが、会社にとっての大きなメリットとなる。また会社が負担した掛金はすべて損金に算入できるという点も長所だ。例えば単純に3000円賃上げすれば、増額分は給与所得となり、その分の社会保険料も支払う義務が発生するが、イデコプラスの掛金として負担すれば社会保険料はかからない。従業員としては実質3000円の賃上げで、しかも老後の備えになるというのだから、モチベーションアップにも最適だろう。

 

 注意点としては、会社負担分の掛金は給料と一緒に個人が支払うのではなく、個人負担分を給料から天引きして個人と会社の負担分をまとめて会社が支払わなければならない点がある。その他にも導入時に従業員の過半数の同意が必要となるなどの条件もあるが、役職によって会社負担の掛金に差を付けるといった調整も可能なため、退職金制度を整備していない社長さんは検討してみてはいかがだろうか。(2018/10/22)