その・ふくじろう
大正元(1912)年生まれ。兵庫県出身。昭和5(1930)年に神戸の育英商業学校を卒業後、神戸高等工業学校(現在の神戸大学工学部の前身)に学ぶ。昭和7(1932)年、鐘淵紡績に入社。5年間勤務した後、昭和12(1937)年には東京電気化学工業(現在のTDK)へ移籍。同社は昭和10(1935)年12月に設立されたばかりのベンチャー企業で、創業後間もないこの当時の従業員はわずかに4人だったという。入社後は一貫して営業部門を担当し、松下電器産業(現・パナソニック)など大口の取引先を開拓。昭和44(1969)年には社長に就任。積極的な海外進出でTDKを世界最大の磁気テープメーカーに育て上げ「中興の祖」と呼ばれた。上の言葉は社長時代のもの。企業が成長するための秘訣を問われ「家庭も学校も当てになりませんので、企業で教育をしなくてはね。企業は道場ですよ」と語った。当時、TDKでは管理職ポストの4割を他社からの移籍組が占めていたことから、社内の結束を強化するため社員教育に力を入れていた。幹部社員に対しては「みっともないことをするな。私心なく働くひとに部下は従う。能力、学歴は関係ない」と語り、我執を捨てることが肝要だと説いたという。昭和58(1983)に会長就任、昭和62(1987)年には相談役に退いた。平成16(2004)年、91歳で死去。