民間平均給与421万円に

4年連続で増加

正規・非正規の格差拡大


 民間企業で働く正規雇用者や非正規雇用者の平成28年の平均給与は421万6千円で、前年から1万2千円増えたことが国税庁の統計調査(民間給与実態統計調査)で明らかになった。25年から4年連続で増加しているが、リーマン・ショック前の水準にはまだ戻っていない。


リーマン・ショック前には戻らず

 民間給与の平均額は平成9年の467万3千円をピークに徐々に下降(グラフ)。特に20年のリーマン・ショックの影響で大きく落ち込み、19年の437万2千円から21年には405万9千円へと7・2%も下落した。ここ数年は上昇傾向にあるが、リーマン・ショック前の数字にはいまだ至らず、ピーク時からみれば1割減の水準となっている。このデータを見る限り景気が復活したとはいえないようだ。

 

 なお、平成28年の平均給与421万6千円の内訳は、給料と手当が357万1千円、賞与が64万5千円。男女別にみると男性521万1千円、女性279万7千円だった(表1)

 

雇用形態の違いで314万円の差

 国税庁は平成24年分の調査以降、パートタイマー、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などの「非正規雇用者」と、それ以外の「正規雇用者」を区分した分析結果を発表している。

 

 調査を開始した24年と最新の28年を比べると、正規雇用者は3011万6千人から3182万2千人へと5・7%の増加にとどまったが、非正規雇用者は987万6千人から1154万6千人へと、16・9%の大幅な増加となった。アベノミクスの効果によって雇用が増えたとされるが、所得が比較的少ない非正規雇用者の増加が数字を押し上げているのは明らかだ。

 

 正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差が広がっていることも分かる。平成24年には平均給与の差は300万円を切っていたが、28年には314万8千円にまで差が広がった(表2)

 

 会社としては長期間働く傾向にある正規雇用者を雇いたくても、支払う賃金を抑えるためにやむなく非正規雇用者を増やし、その結果として「ワーキング・プア」と呼称される低所得者層が増えている状況だ。

 

電気・ガス・水道など高収入業界の固定化進む

 平均給与の額を業種別にみると、最も高額なのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の769万4千円だった(表3)。なお、福島原発の事故直後は年収が大幅に減った東京電力も、いまでは震災前の給与水準に回復しているという。第2位は「金融業・保険業」の625万9千円。「情報通信業」の574万8千円が続く。

 

 ワースト3は「宿泊業・飲食サービス業」の234万3千円、「農林水産・鉱業」の294万4千円、「サービス業」の341万1千円だった。業種別の順位は毎年大きな変動はなく、高給取りが多い業界の固定化が進んでいるともいえる。

(2017/12/04更新)