日本CFO協会(藤田純孝理事長)は、東芝、神戸製鋼所、日産自動車、東レなどの大企業で相次ぐ不正発覚を受け、CFO(最高財務責任者)や経理・財務部門担当者を対象とした粉飾、横領、着服などの不正に関する実態調査を実施。組織内で不正を見聞きしたことがあると回答した割合が7割超だったことを明らかにした。同協会は200社超の法人と約4000人の個人が加盟し、経理・財務の調査・研究などを行っている。今回の実態調査は10月17日〜31日に実施され、347人が回答した。
実態調査では、「今まで(前職も含めて)不正が行われていることを見聞きしたことがある」と回答した人が73%に上った(グラフ1)。そのうち56%が不正額1000万円を超え、数百億円に及ぶものがあることも明らかになった(グラフ2)。
また不正の手口として、「どのような不正を見聞きしたか」と聞いたところ、「経費精算のごまかし」が68%で最も多く、「架空発注・水増し発注・キックバック」が52%、「架空の売上の計上」が41%、「費用の繰り延べ」が40%、「売上の先行計上」が36%と続いた(グラフ3)。
さらに「不正を指示されたことがあるか」という質問には、11%(26人)が「ある」とし、このうち11人が上司の指示を受け入れ、不正行為を行ったと回答した(グラフ4)。
今回の実態調査について記者会見をした同協会の主任研究委員である辻さちえ氏(エスプラス代表、公認会計士)は「経営レベルの不正を予防する役割として監査役が期待されている反面、社内での経理や財務上の不正に対する牽制責任が担当役員にあると認識していない企業もある」と説明し、不正を未然に防ぐには、経理担当部門と監査役との連携を密にする必要を強調した。
不正リスクを軽減する方法として「ITを活用しながら不正ができない仕組みを作っていくべきだ。さまざまな事象のデータ化が可能であり、データを基に異常値検証などを行うべき」と提言した。
また海外拠点での粉飾を発見する仕組みが機能している企業が29%にとどまっていることについて触れ(グラフ5)、「顕在化していない不正がたくさんある可能性がある」と述べた。
また辻氏は、国内、海外に限らず、粉飾決算を発見するために必要なのは「変化」に気づくことだと強調。「普段から会社の状況と会計の数値を注意深く分析し、検証することが必要だ」と指摘した。
会見に同席した中田清穂主任研究委員(ナレッジネットワーク代表)は、相次いで発生する大手企業のデータ改ざんについて「現場が重大な不正をしていることを認識できていない。日本の企業は『不正は起きない』という性善説に立っており、なかなか問題が顕在化しない。不正があることを前提にした管理体制を考えて行かなければ、今後も不正案件は続々と出てくるだろう」と警鐘を鳴らした。
(2018/02/01更新)