コロナ対策税制徹底活用!

使えるものは何でも使って乗り切る


 新型コロナの流行によって多くの事業者が資金繰りに苦しんでいることを踏まえ、政府は中小事業者の税負担を緩和するためのコロナ対策税制を閣議決定した。固定資産税の減免制度など、主に事業者向けの新税制をまとめた。


課税選択の条件緩和

 消費税の課税事業者となるか免税事業者となるかの選択は、通常、課税期間の開始前に届け出を提出しなければならず、また課税事業者となった後2年間は継続適用しなければならない。だが新型コロナによる被害を受けている事業者に限っては、課税期間開始後の適用変更が認められ、翌課税期間に適用を取りやめることも可能となる。

 条件は1カ月以上の一定期間の売上が前年同期比でおおむね5割以上減少していることで、今年2月から来年1月までに売上が減少した期間がある事業者が対象となる。

 

固定資産税の負担軽減

 中小事業者の償却資産と事業用家屋の固定資産税が軽減される。軽減割合は今年2月から10月までの間の任意の3カ月間の売上高の減少幅に応じて変わり、前年同期比で3割以上5割未満減なら2分の1、半分以上の減少ならゼロとなる。なお地方税である固定資産税も国税と同様に、収入が2割以上減少していれば納税猶予の対象となる。

 

繰戻し還付の対象拡充

 前年度に黒字だった法人が今年度は赤字になった場合、前年度までに納めた法人税の還付を受けられる「欠損金の繰り戻し還付」の対象が拡充される。通常は資本金1億円以下の法人しか対象にならないが、今年2月〜2022年1月に終了する事業年度については、資本金1億円超10億円以下の法人も対象となる。ただし大規模法人のグループ会社や100%子会社は対象に含まれない。

 

印紙税の非課税特例

 新型コロナウイルスで経営に影響を受けた企業に対する「特別貸付制度」については、公的金融機関、民間金融機関にかかわらず、貸付契約の契約書を印紙税の対象から外す。すでに契約を結んでいるものについては遡って条件を緩和し、印紙税を還付する。

 

テレワーク優遇税制

 在宅勤務に移行する企業が増えていることを受け、テレワークを導入する企業を対象にした優遇税制が講じられる。一定の設備を導入した中小企業が法人税額の20%を限度に即時償却または7%(資本金3千万円以下の法人は10%)の税額控除を選択できる「中小企業経営強化税制」を拡充するもので、既存の制度では生産性が1%以上向上する設備や、投資収益率が年平均5%以上伸びる計画に沿った設備が対象だが、これに、「遠隔化、可視化、自動制御化のいずれかに該当する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエア」が追加される。

 

自動車税・軽自動税の軽減特例の延長

 自動車関連税の大幅な改組に伴って導入された軽減特例を延長する。具体的には、自動車税、軽自動車税の環境性能割について、税率を1%軽減する特例の期限を今年9月末から来年3月末まで半年延長する。それに伴い、来年3月末までに取得したクルマを特例の対象に追加する。

 

住宅ローン控除の適用要件の緩和

 新型コロナ感染拡大の影響で住宅建設に遅延が生じていることから、住宅ローン減税の適用を受けるための要件が緩和される。本来は年末までに入居していなければ適用できないが、新型コロナの影響で入居が遅れた納税者が、一定の期日までに取得や増改築に関する契約を結んでいて来年までに住み始めるのであれば、今年中に入居していなくても適用できることとした。特例の対象となる「一定の期日」は、新築であれば今年9月末、建売住宅・中古住宅の取得や増改築であれば11月末となっている。

 

チケット払い戻しで寄付控除

 政府の開催自粛要請を受けて中止・延期となったイベントの主催者の損失を軽減するための税制措置も盛り込まれた。チケットの購入者が払い戻しをしなければ主催者に寄付したとみなし、所得控除もしくは税額控除といった所得税の優遇措置を受けられることとする。また、地方税の個人住民税も最大10%の税額控除が認められる。対象は不特定多数を対象としたイベントで、2月から来年1月までに国内で開催する予定だったもの。寄付金控除の対象金額の上限は20万円。控除制度を適用するには、確定申告の際に、払い戻し請求権を放棄したことを証明する文書を申告書に添付する必要がある。

(2020/05/29更新)