オンライン飲み会の損金算入

コロナ禍の〝会食〟経費


 多人数での外食の自粛が求められているコロナ禍で、3密にならずに済む〝オンライン飲み会〟が多くの人に受け入れられつつある。職場の仲間や取引先とパソコンの画面越しに〝会食〟するということもあり得る話だ。社員や役員が参加する会社のオンライン飲み会の費用は基本的に損金にできるが、対応を誤ると給与課税され、会社は費用を損金にできなくなるおそれがある。リモート飲み会の税務処理について注意点を確認しておきたい。


 政府は5人以上のグループでの飲食でクラスターの発生が目立つということを理由に、「なるべく普段から一緒にいる人と少人数で開催すること」と呼び掛けている。その要請に強制力はないとは言え、多人数での宴会に対する世間の目も厳しく、開催に二の足を踏む事業者は多い。

 

 だが、コロナ禍で自粛が求められている宴会はあくまでも参加者同士が密になるものであって、接触することがなく感染リスクのない「オンライン飲み会」であれば誰にとがめられるものでもない。そのためコロナ禍では、パソコンやスマホの画面を通じて自宅などから参加し、一緒に飲食をする飲み会のニーズが高まっている。

 

 日本フードデリバリー社が事業者を対象に実施したアンケート調査によると、職場の忘年会の「開催場所」として望ましいものを問う項目で「オンライン」と回答した人は全体の24・6%に及んだ(複数回答)。つまり4人に1人はオンラインでの開催を望んでいる状況となっている。

 

 会社が負担する飲み会の費用は基本的に損金にすることができる。これはオンライン飲み会でも大きくは変わらないが、通常の飲み会とは異なる対応が必要な部分もあるので注意しなければならない。

 

福利厚生費と交際費の境界線

 社内行事として全社員を対象に開催した職場の忘年会・新年会の費用は、実際に支払ったことの証明があれば「福利厚生費」として全額が損金となる。

 

 飲食店での飲み会なら会計時に受け取った領収書を保存しておけば問題なく、保管するべき文書は基本的に一枚で事足りる。密を避けるためなどの理由で店を貸し切って開催する場合には、「飲食そのものの代金だけでなく場所代も損金にできる」(国税庁の法人課税担当者)という。

 

 一方で、飲食する場所が別々になるオンライン飲み会では、一般的に社員それぞれが飲食物を用意することとなるため、各自が購入時に受け取った領収書を会社が取りまとめて損金算入額を計算する必要がある。その手間が面倒ということであれば、会社が飲食物を一括注文して社員の自宅に届けるという方法もある。この場合は自宅への送料も含めた全額を損金にすることが可能だ。

 

 ただし、一部の役員や社員を対象とした飲み会の費用は福利厚生費とはならず、原則として全額を損金にすることはできない。職場の仲間であっても〝社内接待〟とみなされ、損金算入が制限される「交際費」として計上することになる。自宅にインターネット環境がある社員だけでオンライン飲み会を開催するのであれば注意したい。

 

 職場の飲み会の費用は「福利厚生費」として全額損金になるが、取引先との飲み会の費用は「交際費」となる。交際費は損金算入が制限されることになっているが、中小企業は800万円までは全額を法人所得から控除できるほか、交際費の中の接待飲食費の半額を損金にするという税務処理も可能で、接待のための飲食だけで1600万円を超えた事業者は、その半額を損金にした方が有利となる。

 

 さらに、参加者1人当たり5千円以下の飲食費であれば交際費に加える必要はなく、年間合計額の上限なくすべてを損金とすることが認められている。

 

給与課税の対象になることも

 取引先とのオンライン飲み会で注意が必要なのは、中締めをした後に希望者だけで飲食を続ける〝二次会〟に移行するケースだ。

 

 二次会を開催した場合に「5千円ルール」の金額基準を満たすか否かは、一次会と二次会が「一体の行為」であるかどうかで判定し、一体の行為とされるものであればふたつの会の費用の合計額で見る必要がある。例えば居酒屋で一次会をした後にスナックで二次会をしたのであれば、一体の行為とはみなされず、それぞれの店の飲食費が1人当たり5千円以下なら法人所得から全額を差し引ける。

 

 だが、オンライン飲み会の場合は、たとえ参加者が二次会という認識でも、飲み会は同じ場所で続いているとみなされる。そのため一次会と二次会の費用の総計が1人当たり5千円以下でない限り、原則として交際費処理しなければならない。

 

 忘年会・新年会の費用は原則として福利厚生費や交際費として損金にできるが、社内のレクリエーションや取引先との交流を目的とした飲み会ではなく、役員や社員個人の経済的利益のための飲み会であると税務署にみなされてしまうと損金にできないことがある。

 

 例えば、各自に飲食料品を用意させて後から領収書を取りまとめるのが面倒と考え、オンライン飲み会の費用を一律数千円配るといった対応をとるようなケースだ。社員・役員は給与を受け取ったものとみなされて所得税が課税され、さらに役員への支払い分は臨時報酬として損金にできなくなる。

 

 オンライン飲み会という新しいスタイルが定着しつつある。税務会計で戸惑う場面も少なくないだろう。余計な税負担をなくすためにも、間違いのない税務処理を心掛けたい。

(2021/01/29更新)