お得な返礼品がどんどん消滅

駆け込め!ふるさと納税

すでに〝売り切れ〟の返礼品も


 多彩な返礼品が受け取れることで利用者数を伸ばし続けてきた「ふるさと納税」制度に、異変が起きている。今年4月に総務省から出された「要請」をきっかけに、これまで人気を博してきた返礼品が次々にラインナップから消えつつあるのだ。例年ならば11月や12月に慌てて駆け込みで寄付先を選ぶという人も多かっただろうが、今年はそう悠長に構えてはいられない。まさに今が〝駆け込み納税〞の時期と言えそうだ。


 総務省はこのほど、2016年度のふるさと納税制度の利用状況を発表した。それによれば、制度を利用した寄付件数は1272万件、寄付総額は2844億円だった。件数、金額ともに前年より7割以上伸び、特に寄付金額では直近3年間で約20倍に急増している。全国で最も多額の寄付を集めたのは宮崎県都城市で、73億3300万円の寄付があったという。

 

 寄付件数が右肩上がりに増加している一番の理由は、自治体側が用意する多彩な返礼品にある。返礼品はふるさと納税の制度に組み込まれているものではないが、寄付へのお礼の気持ちとして自治体が送り始めた返礼品が制度を普及させ、利用増につながったことは疑いようがないだろう。

 

 だが、そうした流れが変わりつつある。総務省は今年4月、全国の自治体に対して「返礼品の価値が寄付金額の3割を超えるものや、換金性の高い品物については送らないようにしてほしい」とする要請を出した。これを受け、全国の自治体で次々に返礼品を見直す動きが出てきているのだ。

 

総務省がついにキレた!

 総務省が要請を行うのは今回が初めてでなく、2015年4月に一回目の「自粛」要請が全国に出された。換金性の高い返礼品を控えるよう求めるもので、要請を受けて千葉県市川市が「Tポイント」による返礼を取りやめている。

 

 それから1年後の16年4月、総務省は全国の自治体に対して、二度目の「換金性の高い返礼品は中止すべし」との通知を出す。背景にあったのは、一部の自治体が15年度から送り始めた〝7割金券〞で、寄付金額の7割の額面で使える商品券を転売するというスキームが富裕層のあいだで流行したことが問題視された。

 

 しかし通知には法的拘束力がなく、あくまで要請にとどまることから、高額な返礼品を用意する自治体はなくならなかった。最初に〝7割金券〞を用意した千葉県大多喜町では寄付金額が前年の40倍に増加していることからも分かるように、高額返礼品の効果は絶大だ。まして率先して中止しても、近隣自治体がやめなければ寄付金額の差は広がる一方で、先んじて廃止する理由はない。

 

 こうした状況を受けて総務省が出したのが、今年4月の通知だ。「仏の顔も三度まで」とでも言うように、過去にない強い口調で自粛を求めるとともに、「返礼品の価値は寄付金額の3割以下」という具体的な基準を初めて打ち出した。さらに基準を受け入れない自治体に対しては個別に繰り返し要請をしていくという姿勢を示したことも、総務省の〝本気度〞をうかがわせた。

 

 前述したように自粛はあくまで要請であり、自治体に従う義務はない。しかし総務省が実際に4月以降、複数の自治体に対して個別に働きかけを行ったこともあり、多くの自治体が、ついに高額返礼品の廃止へと方針を変えつつある。

 

年末では遅いかも

 16年度に最も多額の寄付を集めた都城市は、これまで100万円の寄付に対して送っていた「焼酎365本詰め合わせ」を今年6月に取りやめた。同様に50万円以上の寄付に対する返礼品なども見直し、その結果、6月の寄付は前年の実に3割程度まで落ち込んだという。

 

 また16年度の寄付額が全国7位だった山形県米沢市は、市内の工場で製造するパソコンの取り扱いを中止した。寄付総額の8割はパソコン希望だったというから、その影響はあまりにも深刻だ。他にも全国2位の長野県伊那市も6月から一部の返礼品を廃止するなど、なんと寄付受け入れ額の多い200自治体のうち、9割がすでに高額返礼品の廃止を行ったか、近日中に行う予定だという。来年の寄付額ランキングは、大きく顔ぶれが変わっているかもしれない。

 

 見直し時期は都城市と伊那市が6月、米沢市が7月で、8月から高額返礼品がなくなった自治体も多い。まさに今が返礼品見直しの真っ最中であり、返礼率3割を超える品物は現在進行形でなくなりつつあると言える。もちろん、駆け込み寄付によって、間に合うチャンスは残っているものの、すでに〝品切れ〞となっているものも多い。

 

 そうしたなか、まだ高額返礼品を見直していない自治体もある。「地元の特産品である」として真珠製品の返礼を継続する方針を示している三重県鳥羽市や、「換金性が高い」として自粛を求められている家具の返礼を続ける愛知県東浦町などがある。だが総務省はこれらの自治体にも働きかけを続けていく構えで、現状のラインナップを続けられるのも時間の問題かもしれない。

 

 例年、ふるさと納税の駆け込み時期といえば、寄付金額がリセットされる年末に近づく11月から12月だった。しかし今年は、それでは遅いと言わざるを得ない。すでに残り少ない高額返礼品への寄付ラッシュは始まっている。来年の今頃にはすっかり返礼品のラインナップが様変わりしている可能性も踏まえ、寄付を考えているなら今すぐ動かねばならないだろう。

(2017/08/31更新)