相続に一般社団法人を〝活用〟

法改正などのリスクも念頭に


 一般社団法人を相続税対策に活用することが話題となっている。「社団」とは、PTA、同窓会、OB会などと同じで、人が集まることで成り立つ団体だ。株式会社と違い持分(所有権)がないために相続税の課税対象にならない。

 

 そのため、個人の所有する財産を一般社団法人に譲渡し、理事の役職を親族内で交代することで実質的な財産の承継を行うことが可能となる。ただ、相続税対策を目的とした一般社団法人の活用が増えていけば、いずれは普通に納税する人に不公平感が生まれてくる。そうした状況を政府や課税当局が見過ごし続けるはずはない。

 

 「一般社団法人へ移した財産は、相続財産に加算する」といった法改正が行われる可能性もある。また、財産管理や相続争いのリスクも無視できない。通常の相続であれば、遺言書のないときに備えて法定相続割合が定められている。しかし、一般社団法人の社員・理事などの身分にはそのような規定はない。

 

 そのため、理事である親族内で争いが起これば、収拾がつかなくなる。さらに、将来、親族以外の社員が加わり、社員・理事の親族としての関係性や立場が変化することもありえる。このとき、親族の財産の保全という意図が守られなくなってしまうかもしれない。(2017/08/05)