イスラムの相続

聖典の「相続法」で厳格に規定


 イスラム文化圏における「相続法」は、確固とした伝統の下にある。イスラム教の聖典『クルアーン』(コーラン)の中で唯一神アッラーが、相続(遺産)について「男性は女性の2人分」と命じている。他文化圏の人は、一見、「イスラムの相続は、女性にとって不公平」と誤解してしまうかもしれない。しかし、そうではないらしい。女性には経済的な負担や義務は一切課されておらず、そのすべては男性が負うという〝教え〟なのだという。

 

 イスラム圏での男性に対する女性への扶養義務は徹底している。男性は女性の扶養家族が結婚するまで経済的な面倒を見なければならず、結婚した時点で彼女の経済的責任は夫へと移る。そして夫の死後は、息子または他の男性家族による未亡人の世話が義務となる。

 

 この前提を考慮すれば、「男性は女性の2人分」とは、経済的責任を負わない女性にも男性の半分の相続権を認めていることになる。経済負担から考えれば女性への分配率は相当に高いともいえよう。しかも、「男は女の2人分」は最低ラインであり、「女性は男性と同等」「女性は男性より幾分少量」であることも、アッラーは認めている。

 

 また、イスラムの相続では、特定の人物に対して自由に財産を分け与える量が3分の1までと決められているのも興味深い。残りの財産は、すべてクルアーンに由来する相続法に基づき分配される。(2017/08/09)