【副流煙】(2016年11月号)


広島県福山市の病院(263床)が、全面禁煙としている病院敷地内で職員が喫煙していたとして、禁煙外来の診療を取りやめる辞退届を提出した。診療報酬の返還については当局の指導に従うという▼今年8月、敷地内のゴミ集積場で喫煙する職員を目撃したとの報告を内部から受けたことで発覚した。この場所では今年に入ってから3度、吸い殻が見つかっていた▼この病院では2006年に禁煙外来を設置。この治療が保険適用を受けるには、敷地内を全面禁煙にする必要があるため、同院でも開設時から実施を徹底してきた。以来、10年にわたって積み上げてきた診療努力が、たったひとりの喫煙によって、まさに煙のように消えてしまった。まったく高くついた一服だ▼1982年に33人もの犠牲者を出したホテルニュージャパン火災も、直接の出火原因は英国人男性宿泊客による「酒に酔っての寝たばこ」だったとされている。たばこは喫煙者の不始末によって、他人をも巻き添えにする〝凶器〞にもなりかねない▼たばこ農家を保護することは選挙での「票」につながり、たばこ税は直接「税収」につながるのだろうが、副流煙による受動喫煙で吸わない人まで健康を害し、結果として医療費の負担が増えてしまうようでは本末転倒だ。