【〝手〟】(2015年7月号)


新たな手口だ。年金情報が流失したことをネタに、新手の電話詐欺が増えているという。口八丁手八丁のこうした犯罪を取り締まる警察当局も手をこまねいているわけではない。手を焼きながらも、手を変え品を変え、さまざまな捜査手法を駆使して詐欺グループを追い詰める▼先手必勝とばかりに、あの手この手をすぐさま思いついて実行する〝姿勢〟には、犯罪集団ながらも妙に感心させられる。経営と詐欺とを同列に並べるわけではないが、後手に回らないための果断な行動力は、社長さんにも求められるところだ▼「手鍋提げても」という奥さんの内助の功に支えられながら、従業員と手を携えて事業を発展させていく。ときにはライバル会社と手を組むことも必要だろう。その一方では手塩に掛けて育ててきた事業から手を引き、長年の取引先と手を切り、協力会社と手を分かつ決断も迫られる▼1998年、宇宙飛行士の向井千秋さんがディスカバリー号から「宙返り何度もできる無重力」と上の句を詠んで、地球の子どもたちに下の句をつくってと呼びかけた。当時、来日していたクリントン大統領もこれに参加。その句は「手を取り合えば不可能はない」と和訳された▼海洋に触手を伸ばす隣国には困ったものだが、米国と手を結べば不可能はないという首相の姿勢もどうかと思う。冷静に次の一手を考えたい。