【分別】(2019年7月号)


高齢者ドライバーの危険運転による痛ましい事故、幼い子どもらが犠牲になった通り魔的殺人事件、お年寄りを狙った架空請求詐欺などなど、なんともやりきれない思いにさせられるニュースばかりが目につく。令和改元詐欺などという新手も横行しているというからウンザリだ。まったくもって「分別」もなにもあったものではない▼暴言・失言がもとで辞職したばかりの前大臣が、今度は「子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」と述べ批判を浴びた。自民党では所属議員に対して「失言防止マニュアル」を配布。歴史認識やLGBTなどについては特に気をつけるように、との内容だが、なんでもかんでもマニュアル化する前に、まずは「分別」を身につける努力をしたらどうか▼親類の葬儀に参列するため飛行機に乗ろうとしていた沖縄の男子高校生が、航空券代の入った財布をなくして途方に暮れていた。たまたま出会った男性が6万円を生徒に渡して出発便に急がせたという▼この親切な男性は埼玉県の医師。高校生が〝恩人〞を捜していることをネットで知り感激したという。凶悪犯罪や詐欺事件が頻発するこのご時世に、若者を信じて飛行機代を差し出したドクターの正しい「分別」に、心から敬意を表したい。